自殺流れ星説17
40代位、営業風の男性だった。
人の良さが滲み出ている優しい顔。
差し出された缶飲料、トマトジュースとミルクティ。
なんでそこでそんなドロドロした飲み物を?
なんて事は1ミリも思わなかった。
無我夢中で缶蓋を押し上げ、喉にグビグビ流し込む…
ああ!うめぇ!!
だが声は出ない。
俺の夢中な様を横目に、その男性は尋ねてきた。
「こんなこと聞くのもあれだけど、君、お金持ってるのかい?」
この時、なんて答えるのが正解だったんだろう。
今でもまだ正解がなんだったのか決めあぐねている。
そもそも、俺は自分を戒める為にこの行為に及んでいた。だから、助けなど不可抗力以外は認めないとも思っていたと思う。
それから金の助けなど余計に余計。
でも俺は正直に言ってしまう…
するとその男性は財布からお札を取り出し、俺の太ももへ目掛けそれを投げた。
「持ってろ、気にしなくていいから」
受け取れる訳が無い。
力強く断れ!!断固として受け取ってはいけない!!
だが、力がほとんど入らないし、立つことも出来ないくらい疲弊していた…
精一杯右手でお札を掴み彼に向ける。
「いや、受け取れません!大丈夫ですから!本当にいいです!!」
「いや、いいんだ、困った時はお互い様だから」
少し影のある優しい笑顔だった。
何がお互い様なものか…
あなたが損するだけでしかない。
俺は全く人を不幸にしてばかりだ…
また自分が嫌いになる。
返答を後悔した。存分に首を垂らした。
彼はそう言うと早々に車に乗り込み、走り去ってしまった…